神さまが司令官

第三章 被災の教会へ


3、復興への歩み

 小さな働きだったかも知れないが、ボランティアの方たちの働きは目覚ましいものがある。物資配布、炊き出し、水汲みなど被災者の生活維持から、荷物の引き出し、ガレキ撤去といった復興への準備、大工仕事や水道、電気の応急修理までも広がっていった。応急修理で当座はしのげる所もあり、それで充分なところもあるが、大半はこれから本格的な復興を目指し始める。その復興の歩みをご紹介しよう。

 3月2日、灘区・六甲にあるマンションの片付けの依頼が来た。岩井先生のご関係で、先生は男性ボランティア4〜5名のチームを組んで出掛けられた。まず、報告書をお読み頂こう。「マンションの1室で、室内全焼の灰、ガレキ等の片付け。2階と3階の1室ずつだけ燃え、全体の鉄骨は問題ないということなので、内装をやり直してまた住みたいとのこと。ご当人は独身、片足が不自由で、今ガレージに泊まっているが、出来るだけ早くその部屋に住みたいとのご希望。とりあえず、ガレキを片付け、灰を取り除いたところ床が使えるようになったので大層喜ばれた」 このマンションには灰がうず高く積もっていたそうである。

 もう少し報告を続ける。
◆ 「Aさん宅では、外部の湯沸器、洗濯機、便所の給水立ち上がり管修理。他の箇所は点検の結果、異状ないと思います。B教会では、外壁のつい立て、倒壊寸前の箇所の切り張り2ヶ所。C教会では壁のクラック部分のコーキング補修。壁崩壊部分のシート上からの板による支持。水ボトル六ケース運搬。モルタルの補修部分は来週の月曜日以降にする」
◆ 「牧師館の風呂、給水給湯の配管完成」
◆ 「男子、女子トイレ使用不能の状態のため、別系統で配管替。仮復旧は終了」
◆ 「外部の蛇口よりトイレ、炊事場にパイプでの水道工事。完了」
◆ 「下水道工事完了。上水道、給水漏水箇所のモルタル補修。通水後のチエック。汚物排水等のつまり修理。完了」
◆ 「物資運搬。牧師館2階トイレ、ロータンク内部修理。M姉宅、メーター先に1栓立ち上がり配管。T教会、風呂漏水点検」
◆ 「破損した屋根瓦の撤去、屋根の掃除をして、その後、アスファルトをひいて、上からゴム製のような屋根の瓦のような防水マットを打ち付けた。終わりまでやり終えることが出来なかったが、教会の方々から感謝された。食事は、カレー、サラダ、フルーツを頂いた」
◆「建物は破壊されていて、借りた仮設の建物(校庭にプレハブを建てた)で勉強するため、机や椅子を運びました。そして、図書館を片づけました」(マリスト国際学校)
◆ 「ワゴン車2台で4往復、旧宅から新宅へと荷物を運搬しました。ただし、今回運搬出来た荷物は全体の1割くらいではないかと思います。残りは今週末に運搬されると言っておられました」(O教会の教会員)
◆ 「家は崩れていないが、土台が移動してしまい、家がゆがんだので、後で立て直すため、まだ使える電化製品をを取り外した。クーラー5台など」(針灸?医院と自宅)

 これらの報告書でお判りのように、復興作業は上下水道、風呂、トイレなどの水まわり、電気、屋根や床、扉などの大工仕事等の応急修理から、当分使用できる状態にまでのかなり本格的な援助になってきている。単なる片付けや解体といった作業から復興に向けて動き出していると言えよう。そして、避難所生活を続けていた人の気持ちが固まり、新しい生活に向けて引っ越しも始まっている。


 そんな風に動き出した人々の意識に合わせるように、幾つかの援助が対策本部に申し出され、実現に向かい始めた。
 まず、日本宗教連盟からの連絡である。

1、ガレキ撤去のこと

 先に、教会は宗教法人として解体撤去は1/2自己負担と決まっていたが、後に回避されたと記した。回避されて大体は全額公費負担となったのであるが、全部というわけではない。これは少し説明を要する。

 東京・日本福音同盟(JEA)の浜田山キリスト教会教会員の佐藤丈史兄からお電話があった。3月初めのことであるが、教会のガレキ撤去について自己負担というのはいかにも重い負担である。これを全額公庫負担とするように政府に要望書を出すところであるから、その旨を含んで対応して欲しいということであった。諸宗教はこの震災の中で果たしてゆくべき大きな役割を担っているのであるから、そのあたりを考慮して貰うつもりだと言われる。この要望書は、日本宗教連盟から担当大臣・五十嵐広三内閣官房長官宛てに提出されたそうである。佐藤兄は同連盟・キリスト教の窓口になっておられる方であった。ついにその要望書は受理され、教会の解体撤去も一般家屋と同列に扱われることが決定、電話でその旨が通知されたとご連絡があった。これを早速、被災教会に連絡、やがて具体的にどうしたら良いのか問い合わせが来はじめた。

 そこで、市役所や県庁に問い合せると、詳しい通知がなくて困っているのだが、一応、従業員数50名以下の中小企業に準ずる宗教法人は、全額公庫負担と理解していると言われ、やがて、国の方からもその基準で実施する旨、文書通知が廻ってきた。それによると、牧師、伝道師などの働き人が50名を超える教会は、大企業扱いになって全額公庫負担からは外れる。包括法人も対象となるので、日基教団など大きな教団で包括法人にしか入っていない教会は、解体撤去の費用も大きな負担となってゆこう。その後の変更は聞いていないので、今後新しい災害が起きた時、一応この線が引き継がれてゆくものと思われるので、教会は出来るだけ個別に宗教法人を取得されるのが得策であろう。

 けれども、役所は教会に対しては非常に好意的であって、余りその辺の事情は調べておられないようであった。申請して、すでに解体撤去を公費負担で済ませたところもある。ただし、自己負担でやってしまったケースもあり、その場合はどうなんでしょうかという問い合わせもあったので、ここに市の広報に掲載された方法をご紹介する。

 費用未払いの場合:必要書類をもって解体撤去処理業者と同伴で出頭。費用支払い済の場合:建築物所有者自身が必要書類を持って出頭。いずれの場合も、解体施工前、中、後の写真が必要とされているので注意を要する。又、これから解体撤去する場合、神戸市、解体撤去処理業者、建物所有者の3者による解体撤去契約を結ばなければならない。

 いろいろと面倒な面もあるが、日本宗教連盟の働きで教会の解体撤去に費用のメドがついたようである。


2、指定寄付金の特例について

 ガレキ撤去の件から数日後、又、佐藤兄からお電話があった。今度は指定寄付金についてである。「指定寄付金」というのは、献金を頂く団体が政府から「指定」されると、その団体に献金する企業の献金は損金扱いとなって、税金の対象外にされ、個人の献金も税金で控除の対象となるものである。学校法人などはこれを申請し、非常に厳しい審査があって指定されるようであるが、普通、宗教法人には許可されないとお聞きした。それが、この震災で大きな打撃を受けたのであるから、特例として認めて欲しいと同じく日本宗教連盟から要請し、3月初旬(ご連絡を頂いたのが3月8日)という非常に早いスピードでこれを認める通知があったそうである。

 これは、各個教会が宗教法人であれば、震災で被災した建物等を原型に復旧するために要するものとして算定される事業費の範囲内で認められるもので、災害のあった日から2年以内に申請、募金期間は原則2年間という特例である。これに対して幾らかの問い合わせがあったが、今後この件について知りたいと思われる方は、左記、救援対策本部あてにご連絡頂きたい。
  キリスト教神戸宣教協力会 救援対策本部 代表  子 安 敏 夫

 政府もこれに力を入れており、相当詳しいマニュアルを文書で流した後、関係者を集めて説明会を開いたほどである。筆者の手元にもそれら資料が届いている。以上2件に関する佐藤兄のご労に深く感謝したい。


 さて、復興への歩みとして、特に倒壊、半壊などで解体撤去を余儀なくされた教会に幾つかの朗報が入った。その一つは、仮設礼拝室として使用出来るテントとプレハブを提供するという申し出である。テントについては私たちもあちこち電話をして随分手を尽くしてみたが、国内のテント製造業者の大半は関西に集中しており、そのほとんどが今回の震災で被災地に流れ込んでいた。6〜7張り欲しいのだが、なかなか手に入らない。岩井先生が奔走されてようやく1張りだけ手に入れたが、それでおしまい。後は前述のキリスト東成教会の谷口先生が韓国に発注して下さり、ワールドビジョン提供ということでようやく見通しがついた。これは韓国の教会が購入、無償でプレゼントして下さったものである。ところが、最終段階で韓国の業者が受注してから製造ということになり、それだけでも1週間の予定が2週間に伸び、あれやこれやで1ヵ月以上やきもきと気をもんだが、こういう非常時にはこれが当たり前なのかもしれない。関係された皆さまに、心からの感謝を申し上げたい。

 そのテントを設営する予定の教会に行ってみた。カナン教会の滝伍平先生ご夫妻もご一緒に。会堂はですでに解体撤去されており、ご高齢の牧師は須磨区のご長男のところに避難しておられた。テントが届きさえすればすぐにでも設営出来るかと思い訪ねたのであるが、その時は隣家を解体中、幾つかの家を取り壊す機材やガレキまでが教会跡地に入り込んでいる。礼拝は幾つかの場所に別れて守っていると役員の方が言っておられたが、それは後に電話でのお話しである。「テントが届いたので、いつでも設営出来ますからあわてません」と明るい声であった。

 もう一つの朗報は、プレハブ提供のニュースである。これもワールドビジョンからの申し出であったが、アメリカから無償提供ということで、幅6メートル、奥行15メートルという大きなものである。ワールドビジョンは初め幼稚園にどうかと考えておられたようだが、この情報を日基教団に流したところ、幾つもの引き合いが来て希望が膨らんでいった。しかし、このプレハブもテントと同様なかなか実態がつかめない。本当に来るのか、現物を見るまでは安心出来ない。多分同じものだったのであろう。全く別のところから「プレハブ提供」のニュースも入ってきて終始混乱させられたが、3月初旬、ワールド・ビジョンの片山信彦先生(救援対策本部長)が私どもの本部をお訪ね下さったことから話がスムースに流れるようになり、その時点からテント、プレハブの窓口はワールドビジョン1本となり、事態を正確につかめるようになった。

 これはアメリカから18棟無償で提供されるというものであったが、その行く先はすでに決まっている。必要ならば今度はもっと日本の実情に合った韓国製のものを輸入、提供できるだろうとのお話であったが、輸送費、工事費等は自己負担となろう。このアメリカ製のものも、本体は無償であったが、建築技師2人も来日して下さり、相当額の費用をワールドビジョンが負担されたとお聞きした。

 このアメリカ製のプレハブが、復興を願う被災教会の第1号として、兵庫松本通教会会堂解体撤去跡地に建てられた。これはクリスチャン新聞4月9日号に掲載され、神戸新聞、サンケイ新聞、関西テレビでも報道されたのでご存知の方も多いだろう。まさに神戸復興の希望の燈であった。幸い幼稚園の跡地もあったので、大きなプレハブを二棟建てることになった。アメリカから技師2人が来て下さったが、ほとんどはボランティアの手で出来上がったのである。ボランティアはキリスト教各方面から集まって下さった多様な方たち、その中に松本通教会を拠点としていた支部、森田グループがいる。森田兄はナウサービスという旅行会社の経営者であるが、その1部門にナウ建設という別会社があって、その責任をとっているのが田村清和兄である。このプレハブ建設は、彼がその大半を指揮してやり遂げた。土台となるるブロック積み、床のコンクリート打ちから入り口のスロープまで、たった2日間アメリカ人技師の仕事を見ただけの図面もない手探りの状態の中で、ボランティアたちとの懸命な働きにより建て上げられたものである。3月30日幼稚園の卒園式、しばらく幼稚園の再開は無理ということで全員が卒園していったが、式に出ていて涙が止まらなかったそうである。この支部は、幼稚園舎用の1棟に寝泊りして、なおボランティア活動を続けている。


 復興への援助の手は多様である。しかし、何といっても住宅問題の解決が鍵である。仮設住宅も随分たくさん建って、一時30万人と言われた避難所生活者が、4月半ば現在5万人弱と少なくなった。避難所ではプライバシーというものが全くない。真冬の寒さの中で暖房といえば使い捨てカイロくらいなもの。そんな辛さも随分解消されてきた。しかし、何回申し込んでも仮設住宅に当たらない方もいる。又、せっかく当たったのに、余りに遠くて入居しない方もいる。いろいろな理由もあるのだろうが、土地を離れたくないという方たちが多いようだ。神戸っ子は神戸が大好きなのである。

 この震災のために県外のたくさんの方々から住居提供の申し出があった。中には相当大きな1戸建というのもあり、寄せられた件数は60を超えている。この情報提供には原田憲夫先生(日本福音キリスト教会連合・副委員長)が特別ご尽力下さったが、東京、川崎、名古屋といった遠方のものが多い。中には鹿児島市外というのもあった。金沢からは幼稚園の先生の仕事込みで受け入れますという連絡も頂いている。これらのご連絡を下さった方々には本当に感謝申し上げたい。しかし、この情報はすぐに各教会、各教団に送ったので、或いは提供先に転居された方があるかも知れないが、対策本部には遂に1件の申し込みもなかった。神戸を離れたくない、その思いが想像以上に強かったのではないかと思われる。唯、親族などのつてを頼って県外に行かれた方はクリスチャンの中にも結構おられるようで、震災後、各教会の礼拝出席者がかなり落ち込んでいると報告が届いている。

 住宅問題を解決する、これが復興への一つの重要な課題であるというので、被災地に建設業者や住宅販売会社などが小さなプレハブを建てて営業を始めた。教会関係でも幾つかの会社がその段取りを始めている。

 (株)グロリアス。アメリカのツーバイフォー住宅を安価で輸入し、提供してゆく。その拠点となり、アメリカの技師たちが寝泊りする場所として、神戸市内に何箇所かツーバイフォーの住宅を建て、モデルルームとして進行中である。垂水区、多聞福音教会の屋上に3階建ての完成に近いものを見た。吉川牧師は私たちの対策本部にずっと詰めておられたが、忙しい合間を縫って、その希望に意欲を燃やしておられる。(株)グロリアス・西村清二)

 もう一つご紹介しよう。
 KOBEエクレシアサービス。これもアメリカのツーバイフォー住宅を安価で提供しようとするものである。3つの会社が業務提携をして、いろいろなニーズに応えてゆけるような体制を整えた。KOBEエクレシアサービスである。森田グループの母体ナウサービスとアメニティ・システム、空水社の3社からなる。需要のある方はどうか連絡して頂きたい。(松本通救援対策本部・森田)

 先にパソコン通信のことをご紹介した。この通信をご覧になって、さまざまな援助を頂いた。そのお1人が東京メノナイト教会連合の大野道夫先生(コイノニア教会)である。先生は私たちのパソコン通信をご覧になって、早速連絡を下さり、メノナイト緊急援助委員会の活動報告書を送って下さった。当本部におもちゃが急に増え始めたのは先生からの呼び掛けからであろう。「被災地の子供たちにおもちゃ、文具を」とパソコン通信で呼びかけたからである。その大野先生が3月中旬、この救援対策本部を訪ねて来られた。いろいろとお話ししているうちに、先にお送り頂いた文書の1文「仮設住宅輸入」のことが挙げられ、必要ならばプレハブということでなく、もっと恒久的なツーバイフォー住宅の可能性もあるとのこと。アメリカのメノナイトのグループは非常に大きな団体であり、無償、又は安価で輸入可能という先生の説明に納得する。ちょうど来られた森田兄にお引き合わせし、今後必要なときに連絡をし合って、被災された方たちのための住宅復興に力を合わせる旨を約して帰られた。ツーバイフォー住宅については、このようなルートも道がついたのである。
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