神さまが司令官

序  事を成してこれを成就(とぐ)る主

                                    本部長  子 安 敏 夫

 この度の阪神・淡路大震災を通して、被災者でもある私たちがどのように考え、どのように行動したかを、最初から深く関わって来られた下山尚孝牧師ご夫妻が各種の残された記録をもとに、この記録本「神さまが司令官」を出版してくださった。

 ただ、あくまでも、これはキリスト教神戸宣教協力会救援対策本部から見た報告書であり、この他にも数多くの救援活動を続けられた団体、教会、個人がおられることは言うまでもない。

 この救援対策本部は日本福音同盟、近放伝等の支援と協力の許に活動した神戸での超教派的教会救援対策本部であり、東は神戸ル−テル神学校、中央は松本通教会、西が当本部と3ケ所に於ける救援活動を通して延べ数千人のボランティアを抱えた、大規模な救援活動体制に膨れ上がるとは誰も予想し得なかった。

 多少の混乱や試行錯誤はあったとしても、終始、驚くほどの秩序と調和が保たれ、神の臨在が常にこの働きを支配され、日夜働くボランティアの中から主を信じ、受け入れる者、信仰を強められる者、献身する者たちが起こされてきているとの報告を受けて、神様のなさるみ業の奇しさに今更の如く聖名を崇めている。この3ケ月余、救援対策本部長の大役を拝命した私であるが、実際の指揮官は言うまでもなく主イエス・キリスト様であった。


 さて、事の起こりはひょんなことから始まった。
地震から6日目の1月23日午前、地震の後片付けや訪問等で多忙を極める私に1本の電話が入った。

 「救世軍から地震で被害を受けた神戸地区の教会の為に、1000万円の緊急義援金が寄せられた。これをどう使うか話し合いたいので集まってほしい」というものだった。それに対して私は、「今、私は高齢の被災者たちに水とおにぎりを配っていてとても行くひまがない。そのお金はなるべく広く多くの被災教会に配られたら良いのではないか」と申し上げた。暫くしてまた電話があり、「何としても出て来てくれ。そうでないと事が進まない」と言う。やむを得ず息子のバイクの後ろに乗せられて会場の神戸中央教会にたどり着いた。

 確か数名の教職信徒が集まっていて、私の顔を見ると、「この大震災を知った全国の諸団体が神戸に支援を申し出てきている。これらの申し出を受け留める受け入れ窓口を早急に設置せねばならない」と話し出した。私の期待した救世軍からの1000万円の義援金云々の話しはとうとう出ずじまい。救援活動の窓口ならば、被害の大きい中央区に設置するのが当然で、神戸の西端にある私たちをわざわざ呼び出すこともあるまいに、と白けた思いになりかけた矢先に思いがけない追い打ち。「教会救援対策本部を神戸一麦教会に設置し、本部長を引き受けてくれないか」「……」つまり、あとで気がついたら、「自分たちは教会のことで手一杯でどうにもならない。悪いが、よろしく頼む」と言うこと。誰の計略か知らないが、人の好い私はマンマとはまって気がついたらとんでもない仕事を引き受けていた―という感じだった。

 しかし、実にこれは主の導きであった。この非常時に、このような光栄ある働きに参加させて頂けたことは私の生涯にとって忘れることの出来ないものとなるであろう。

 明けて1月24日、その日のうちに山のような物資を積んだトラックとボランティア20数人が押しかけてきた。主は私にみ言をもって励まし、「すべて、必要な人、物、お金を必要とする処へ、必要な時に、必要なだけ届けよ」と命じられた。このことは、その時の私にとって途方にくれるような「ムチャクチャな話」に思われた。昔、英国にジョージ・ミウラーと言う人が居て、お祈りだけで何百、何千と言う孤児を養ったという記録を読んだことを思い出した。その再現を主は今、この大震災下にある神戸で起こそうとしておられるのであろうか。

 しかし、現実は考えるひまを私に与えてくれはしなかった。どこから一体どのようにして、この救援対策本部のことを聞きつけてくるのだろうかと不思議に思う程、ボランティアの数は50、800、100名と膨れ上がってゆく。

 初日のボランティアのための毛布150枚は不思議と寝るまでに与えられたが、ほっとする間もなく、毛布、食糧、水、衣料などあらゆる物資の必要をあちらからもこちらからもSOSしてくる。考える前に決断せねばならない。物がないのに明日届けますと約束せねばならない。SOSが来る度に、私は神さまに報告した。事は緊急を要する。すると主も又、速やかに事を運ばれた。ものすごい量の物資を送って来られた。ボランティアの数が足りない! すると大勢のボランティアを主は送ってくださった。「人、物、お金を必要な処へ(必要な時に、必要なだけ)届けよ」と命じられた主は、自らすべてのものを備え、満たされた。


 「事をおこなふエホバ、事をなして之れを成就(とぐ)るエホバ」(エレミヤ33:2文語訳)なる主が事を始め、そして、幕引きをなさった。5月20日現在、神戸宣教協力会救援対策本部の働きは終わっていない。しかし、ボランティア活動が一段落した現時点で、私たちは何よりもまず感謝したい。

 ボランティアの皆さん、ボランティアを送り出して下さった教会の先生方や信徒の皆さん、多くの物資や義援金をお送り下さった皆さん、祈りをもって支えて下さった皆さん、感謝をもってこの報告書を皆様にお届けすることになりました。
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