福音と宗教

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X、新しい宗教

4、新宗教の時代へ

 現代の新宗教には、疑似宗教なのかも知れませんが、礼拝対象の神や仏がおらず、教団も形成されていないものが現われて来ました。それでも、大勢の人たちがのめり込んでいます。占いや霊能がテレビやインターネットで紹介されるようになって、その傾向が加速してきたようです。しかし、そういった傾向を基準にするなら、占いや霊能より、テレビやインターネットがまずその筆頭に上げられるのではないでしょうか。若い人たちには、携帯電話やスマートフォンなのでしょうか。礼拝対象の神仏もなく、教団や教祖も見当たりませんが、確実に人々の心を捕らえ、同一方向へと連れて行っています。その影響力は、そこらの宗教教団より、ずっと強力です。ただ、その目指す方向が多様性に富んでいることから、カルト宗教まがいの視聴者洗脳に、ブレーキをかけているのかも知れません。

 もちろん、そんなものばかりではありません。現代の新宗教には、アルカイダやタリバンなど、イスラム原理主義を標榜する、テロ組織と目される一派も数えられるでしょうし、一方、テロ勢力を撲滅しようと旗を掲げたブッシュ元大統領の、ネオコン(新保守主義)と呼ばれる新宗教も顔を覗かせています。アフガンやパキスタンの攻防戦は、まるで新宗教戦争のようではありませんか。

 現代は、一つ旗の下に結集しない、多様な価値観が個々人を飲み込んでいるようです。これも宗教なのでしょうか。既成教団内の人たちまでがその虜になっています。新宗教の時代なのでしょうか。

 実は私には、宗教には「私は〇〇を信じます」という部分がある、という思い込みがありました。ですから、宗教教団には、有形無形の信じる対象の神的存在が祭られ、礼拝など相応の宗教儀式が行われ、その部分は欠かせないと思っていましたが、新しい宗教には、絶対条件と思われるその部分が欠落していることが多いのです。たとえば「占い」には、もはや神々は見当たりません。イタコが神降ろしをして一種の占いをするなどは、もはや古いタイプに属すると言えましょう。宗教から絶対者を除くなら、もはや宗教とは言えないと思うのは、古いのでしょうか。もっとも、占い師たちは、自分たちのやっていることを宗教とは認識していないようです。しかし、「信者たち」は、宗教に対するのと同じ期待を寄せているのです。つまり、信じる対象を除いて、信じた結果の良い実だけを獲得したいと。もっとも、良く当たる占い師のところには行列が出来るそうですから、信仰対象が占い師自身なのかも知れません。その意味では、イタコが「神様」と呼ばれるのと同じです。しかし、彼らは神々として祭られる礼拝対象にはなっていませんから、やはり、新しい宗教の一つの方向性として、信仰の対象たる絶対者がいなくなっている、と言ったほうが当たっているのかも知れません。

 新しい宗教の極めて現代的な二つ目は、そこから「教団」が欠落し始めているということです。教団は、何も複数の集団を包括する連合体ということではなく、単一集合体であってもいいのですが、「〇〇教」とか「〇〇教会」というような、名乗りを上げることがなくなっていると感じられてなりません。特に占いや霊能・霊媒を中心に、個人事業者とでも言うべき人たちのところに相談者が出向き、癒されたとか、問題が解決したということが重なると、その評判が口コミで信奉者を増やしていくという現象です。時にはそれが教団になることもあるでしょうが、現代では、そのままの関係で推移することが多いようです。それは何を意味しているのでしょうか。信奉される〇〇師の意識にもよると思われますが、多くは、信奉する側の選択に左右されると考えられます。彼らは、信奉するものが教団になることを好まないのです。少しでも組織化の動きが感じられると、たちまち信奉者であることを放棄し、他に移っていきます。教団になってもなお残るのは、ほんの一握りの人たちに過ぎません。束縛されることを嫌うのでしょうか。どうも、そうではないようです。責任を持ちたくない……と考えますと、そのような動きも、何となく理解出来るようです。〇〇教団の信者になると、いやでも教団維持のために、種々の活動参加義務や維持献金、信者獲得の働きへの参加を強制されます。すると、この極めて現代的な新宗教の信奉者は若い女性が大半、というのも納得できるではありませんか。最近は、男性にも草食系などと女性化が進んでいるようですが……。誰か(何か)の支配下で安住するという現象が、最終責任を放棄したところでの服従という選択になり、それが新宗教への帰依につながったと見るのは、考え過ぎでしょうか。もしかしたら、そんな選択をする自分自身が「絶対者」の座を占めているのか、とも思えて来ます。そんなところに、新しい宗教台頭の下地があるのではないかと思われます。その傾向は、今後ますます勢いを増して来るでしょう。


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