福音と宗教

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X、新しい宗教

1、カルト教団

b、エホバの証人−1


 このキリスト教系と言われる教団が、「エホバの証人」を名乗るようになったのは、二代目会長・ラザフォードが、1931年のアメリカ・コロンビア全国大会で、この名称を発表してからです。もともと、現在も続く教団誌「ものみの塔」を発刊したラッセルが、読者を法人組織化し、1884年に、「ペンシルバニアものみの塔聖書冊子協会」を設立したことが発端でした。あちこちに、「王国会館」と看板が上がっているのを見たことがあると思いますが、それが「エホバの証人」教団です。

 初代会長・ラッセルは、長老派教会の家庭に育ったクリスチャンでしたが、再臨派の指導者・ネルソン・バーバーと提携し、1874年に、キリストは「見えない形で」再臨したという教義を打ち出しました。詳しい説明は避けますが、バーバーは、1914年を異邦人の終わりの時として設定します。これが、今のエホバの証人に引き継がれ、「キリストの目に見えない形での再臨の年」という重要な教義になりました。1879年、バーバーと決別したラッセルは、新たな雑誌「シオンのものみの塔およびキリストの臨在の告知者」を創刊。その頃、彼は、身近に迫ったこの世の終わりと、自分たちを含む144,000人が霊的な存在として神に取り上げられる、と熱心に主張していました。しかし、それが起こると予想した1881年は何事もなく過ぎ、再び、前述した1914年に焦点を合わせます。「異邦人の時」は終わり、この世は破壊される。ラッセルとその信者たちは天に上げられ、キリストの千年統治が始まると、新たな終末観を繰り広げます。1914年秋に第一次世界大戦が勃発すると、ついに来るものが来たと興奮し、「異邦人の時」は終わり、「今はハルマゲドンの中にいる」と、予言の成就を高らかに触れ回りました。しかし、1916年10月、ラッセルは宣教中の汽車の中で病死します。そして第一次世界大戦は、1919年、ベルサイユ条約により解決し、世界は平和を迎えました。

 ラッセルの死と、教団の中核であった終末教義の崩壊は、多くの信者を失う大打撃となりました。加えて、戦争に非協力だったことにより、政府や大衆による迫害や、後継者同士の内部争いで、教団の宣教活動は、ほとんど停止状態に陥ったようです。

 初代会長・ラッセル亡き後の教団は、後継者問題で大揺れに揺れ、浮上して来たのがラザフォードです。彼はライバルたちを押さえて二代目会長に納まり、それが現在の教団形成につながります。彼は、組織再建に取り組み、1925年には人類は完全さを取り戻し、エホバの証人信者が支配する千年王国が始まるという、新しい教理を発表します。その時、アブラハム、イサク、ヤコブ等、エホバの忠実な僕が完全な人間として復活し、教団信者と一緒に、新秩序の中で永遠に生きるとしました。この新しい教理は、信者の心を捉え、新たな家から家への宣教活動が開始され、教団は勢いを取り戻します。信者たちは事業、学業、結婚、出産等をみな遅らせ、1925年の新秩序の到来に備え、家を売ったり保険を解約たり、1925年以降の収穫は必要がないと種を蒔くことをやめた農家など、1914年のキリスト再臨説の熱気が再現されましたが、この1925年にも何事も起こらず、人々は失望してこの教団から離れていきます。しかし、ラザフォードは、「終わりはすぐ間近」であり、「たとえ今、外れても、数年あるいは数ヶ月のうちには実現するだろう」と言い続けました。この、終わりの時の設定、それに備えた信者の動員と信者の急増加、失望とそれを繕う予言の修正というパターンは、1914年の終末説が、いろいろと形を変えたと見ていいでしょう。その年、キリストは見えない形で再臨し、裁きの王座に着かれるというのですが、最近、再臨と王座に着かれることは別のことであるとして、終末日の引き延ばしを図りはじめました。何度も失敗し、当然のことでしょうが、それは信者から緊張感を奪い、家から家という伝道方式も、はかばかしい成果を得られなくなっているようです。そして、その緊張感の喪失は、カルト教団に特有の、洗脳力を失いかけている?とも指摘され始めています。教団側もカルト色を払拭しようと、ソフトムード一杯です。批判者を育てるからと否定的だった高等教育を、現代への対応に必要と方針転換し、兵役拒否では、これまで認められなかった病院勤務などの非戦闘代替勤務も、エホバの前で正しい選択という表現に変わりました。もしかしたら、すでに十分すぎるほどの資産を得ていて、過去の諸宗教がそうであったように、この教団も、守りの姿勢に入ったのかも知れません。そのためか、教団の最高権力を、会長からニューヨーク・ブルックリンの教団本部にある、わずか10数人の男性信者で構成される執行部・「統治体」に移行し、若手を加えて強化。教団の弱体化を、強力な組織力でカバーしようとしているようです。


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