2015 Christmas Message


とこしえの約束が

Uサムエル記 7:8−13
ルカ 1:31−33

T 恵みの宣言と発動

 預言者ナタンに語られた主のことばは、「今、わたしのしもべダビデにこう言え」と、一呼吸おいて改まります。「万軍の主はこう仰せられる。わたしはあなたを、羊の群れを追う牧場からとり、わたしの民イスラエルの君主とした。そして、あなたがどこに行っても、あなたとともにおり、あなたの前であなたのすべての敵を断ち滅ぼした。わたしは地上の大いなる者の名に等しい大いなる名をあなたに与えよう。」(8-9) これは、ダビデに対する神さまの恩恵の宣言ですが、その恩恵が、喜び踊りながら「神の箱」をダビデの町に運び上った、ダビデの信仰への対価とする主張はどこにも見当たりません。強いて言うなら、「……『なぜ、あなたがたはわたしのために杉材の家を建てなかったのか。』と、一度でも言ったことがあろうか」(5-7)と言われる中に、神さまがダビデの信仰を受け止めておられることが見られるようです。イスラエルの国家神学・「シナイ契約」に見られる、律法遵守への対価としての恩恵は影を潜め、ダビデに、その様々な欠点にもかかわらず、一方的に恩恵を与えるという宣言です。これは新約聖書を体系づける「恵みの契約」、と言ってもいいのではないでしょうか。そしてその恩恵は、ダビデをイスラエルの君主とすることで、すでに発動していました。


U 希望の約束が

 続いて預言者ナタンに語られた主のことばは、より具体的な形へと進んでいきます。「わたしが、わたしの民イスラエルのために一つの場所を定め、民を住みつかせ、民がその所に住むなら、もはや民は恐れおののくことはない。不正な者たちも、初めのころのように重ねて民を苦しめることはない。それは、わたしの民の上にさばきつかさを任命したころのことである。わたしはあなたをすべての敵から守って、安息を与える。さらに主はあなたに告げる。『主は、あなたのために一つの家を造る。』」(10-11) ダビデが願った神殿建設は、ソロモンの時代に先延ばしされます。しかし、神さまはダビデに、「あなたのために一つの家を造る」と約束されました。これは、イスラエルを神さまの民とする求心的役割を担うべき、「一つの家系」を造るという約束です。これは神さまの約束であって、決して反故にされるものではありません。神さまが絶対的存在であると同様に、その約束は必ず成るのです。この後ダビデ王家は、イスラエル民族が危機に陥った時にも、彼らの希望となり、その希望はメシヤ待望の信仰へと結実して行きました。


V とこしえの約束が

 「あなたの日数が満ち、あなたがあなたの先祖たちとともに眠るとき、わたしは、あなたの身から出る世継ぎの子を、あなたのあとに起こし、彼の王国を確立させる。」(12) ダビデ王の後継者問題は、ハギアの子アドニヤが名乗りを上げるなど縺(もつ)れますが、預言者ナタンが動いて、ソロモンが後継者として立てられました。ソロモンはダビデの、ウリヤの妻・バテ・シェバへの懸想から生まれた不義の子でしたが(Uサムエル11:2-5)、イエスさまの十字架を予表させるマタイ1章のイエスさま系図には、そんな醜いところが顕わにされています。そのソロモンを後継者にとは、神さまの恵みが注がれたなら、それはすべてに優先して実現するという証言である同時に、メシアであるイエス・キリスト登場・ご降誕への道筋を整えるものなのでしょう。

 「彼はわたしの名のために一つの家を建て、わたしはその王国の王座をとこしえまでも堅く立てる」(13)というソロモンへの約束は、その治世がイスラエル史上最も領土の拡張した時であり、ソロモン王の名は海外にまで知れ渡りましたが、「とこしえに」と言われるほどのものではありません。ソロモン王の没直後、その子レハベアムの時代に、北の10部族がダビデ王国を離れて北王国を立ち上げ、南北イスラエルは分裂しました。そればかりか、やがて北王国はアッシリヤに滅ぼされ(BC722)、ダビデ王朝だった南王国も、バビロン侵攻の前にあえなく滅びてしまいます(BC596)。そんなダビデ王朝が、「とこしえに」立つと言われるのです。それは、先週触れたように、記述預言者の系譜に属し、神さまの救済計画を共有する啓示者でもあった天使ガブリエルと福音書記者ルカの、イエスさまご降誕というマリヤへの約束(ルカ1:31-33)に続くものであると聞かなければなりません。それが、「ダビデ契約」の完成形である、神さまの「恵みの契約」なのです。